2010年11月30日

「ドレスデン聖十字架合唱団」連載4マクシミリアン&ニクラスのインタビュー

合唱団メンバーのマクシミリアン・トム君は1998年生まれ(12才)で、アルトのパートを歌っています。
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Q:聖十字架合唱団に入ったのは?
マクシミリアン(以下M):
生まれたのは、ここから130キロメートル離れたゲラですが、兄が聖十字架合唱団のメンバーで、現在も在籍していますけど、その関係でボクもごく自然に合唱団に入ったかんじです。小学校4年生になったときに入団したから、もう3年になります。これからアビトゥア(大学入学資格)を取得するまで、あと6年間、合唱団に居るでしょう。

Q:将来の職業の希望は?
M:大学の医学部に進んで医師になることを考えています。

Q:音楽家になろうとはしないの?
M:地域の合唱団に入って歌うことは続けるけど、音楽を職業にする気持ちはありません。

Q:将来の方向がもう決まっているんだね。寄宿舎での一日の行動は?
M:
フツーの学校の授業の他に毎日2時間、合唱の授業があって、それが充実していて楽しいです。他に2時間の自由時間は、たいていサッカーをしています。

Q:これまでに日本に行ったことは?
M:
2年前に6都市を訪れて、みなさんに満足してもらったと思っていますが、今回もっと成果が上げられるといいな、と考えています。あと、家族の全員にピッタリするおみやげを見つけることですね。


バリトンのパートを歌っているニクラス・シーツォルト君は1993年生まれ(17才)で、年長組としての自覚と責任感を持った頼もしいメンバーです。
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Q:聖十字架合唱団での経歴は?
ニクラス(以下N):入団したのは8年前の2002年で、今年が最後の9年目になります。小学4年生で入団して9年間在籍するという、合唱団の規定通りに進んで来たことになります。生まれはケニッヒシュタインという、ここから30キロ離れた町で、小学校の音楽の先生がボクに聖十字架合唱団に入ることを勧めてくれました。それで3年生の時から声楽とピアノのレッスンを受けて、4年生の入団試験の準備をしたのです。

Q:入団した後の寄宿舎生活は、いまの君たちの世代にとって、やはり特殊だよね。
N:確かにそうですね、女子生徒はいないわけだし(笑)。しかし絶対に長所はあって、男子同士の生活を通してお互いに切磋琢磨しています。集団生活だから、喧嘩とかトラブルは起きますよ。だけどそれを解決する協調性が身に付くようになると思います。

Q:楽器は?
N:
ピアノを10年間やっています。ここでは合唱の他に楽器の習得が必須科目になっていて、ヴァイオリン、ギター、クラリネットとか、たいがいの楽器を選べるようになっています。寄宿舎のなかに練習用の個室があり、、また半分ぐらいの寝室にもピアノが入っていて週一回のレッスンの準備をしています。それで年に2回は発表会で全員が演奏することになっています。

Q:現在の声域はバリトンだけど、変声前は?  
N:子供のときはアルトでした。06年から08年までの2年間が変声期で、その期間は合唱を中断し、音楽活動はしなかったけれど、ボクは寄宿舎にはそのまま置いてもらって、フツーの勉強は続けていました。精神的には確かに苦しい時期で、これまで音楽の訓練に割いていた時間が自由になることもあって、合唱団から出てしまう仲間もいました。変声期が終わった後も合唱を続けるのは、それだけ音楽に対する強い意志を持った人間ということになりますね。

Q:これからの将来は?
N:
アビトゥア取得の後、ドイツでは義務になっている兵役に6ヶ月間就きます。実際に軍隊に入るのではなく、病院とかの民間奉仕です。それから大学ですが、まだコミュニケーション関係にするか精神科系の医学部に進むか決心がついていません。

Q:こんなに長く合唱団にいるんだから、すでに日本には行っているよね?
N:ところがまだ一度も行ったことがないんですよ。連れて行ってもらえなかったわけではなくて(笑)、ちょうど変声期だったりしてチャンスを逃しました。だから今度のツアーは非常に楽しみにしています。我々ヨーロッパの合唱文化を日本の皆さんに披露できるのは素晴らしいことだと思うのですよ。

山崎睦(ウィーン在住/音楽ジャーナリスト)



《公演情報》
11月30日(火) 18時30分開演 東京オペラシティコンサートホール
曲目:ヘンデル「メサイア」全曲
12月3日(金) 18時30分開演 サントリーホール
12月5日(日) 14時開演 横浜みなとみらいホール
曲目:J.S.バッハ「マタイ受難曲」全曲

詳しい公演情報はこちらから
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2010年11月29日

上演時間のお知らせ[ドレスデン聖十字架合唱団&ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団]

ドレスデン聖十字架合唱団&ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の公演

ヘンデル:オラトリオ「メサイア」 3時間(休憩含む)
●11月3日(金)18:30開演(18:00開場) 東京オペラシティ コンサートホール 「メサイア」
 前半 105分 18:30〜20:15
 休憩 20分 20:15〜20:35
 後半 55分 20:35〜21:30

J.S.バッハ:「マタイ受難曲」 3時間20分(休憩含む)
 前半 75分
 休憩 20分
 後半 105分
 
●12月3日(金)18:30開演(18:00開場) サントリーホール 「マタイ受難曲」
 前半 18:30〜19:45
 休憩 19:45〜20:05
 後半 20:05〜21:50
 
●12月5日(日)14:00開演(13:30開場) 横浜みなとみらいホール 「マタイ受難曲」
 前半 14:00〜15:15
 休憩 15:15〜15:35
 後半 15:35〜17:20
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「ドレスデン聖十字架合唱団」クライレ楽長インタビュー(その2)

クロイツカントールを務めるロデリヒ・クライレのインタビューその2です。
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Q:聖十字架合唱団の組織について説明してください。
クライレ:少年たちはグルントシュ−レ最高学年の4年生(日本の学制でいう小学4年生)から合唱団に入り、8年間のギムナジウム(中学・高校)と合わせて9年間、合唱団に在籍します。全体で150人といったところです。ソノプラやアルトの声部を歌ってきた少年たちは途中、変声期に掛かりますが、希望者はそのまま在籍し、声帯が成長し、安定した時点でそれぞれテノール、またはバスのパートを受け持ちます。それでギムナジウム8年生終了と同時にアビトゥア(大学入学資格)を取得した彼らを、我々は社会に送り出すことになります。

Q:変声期になった少年たちを追い出してしまう、他の少年合唱団とは大きな違いですね。
クライレ:少年たちが18才の社会人になるまで責任を持って教育するのが聖十字架合唱団のシステムであり、そのことを我々は誇りにしています。

Q:合唱団の日常生活について?
クライレ:最初は全員寄宿舎に入りますが、その後、近くの子供は自由に親元から通学することも可能ですから、世間から隔離された特殊な団体ということはまったくありません。また合唱、一般の学校教育とともに課外でピアノやヴァイオリン、フルートなど、楽器を学ぶチャンスを与えていて、学内発表会も開いています。

Q:少年たちは、その後どのような職業に就きますか?
クライレ:
職業音楽家になるのは3分の一程度ですね。この合唱団はペーター・シュライヤー、テオ・アダム、いま大人気のルネ・パーペといった声楽家を輩出していることで有名ですが、一般的には歌劇場や教会の合唱団、オーケストラ団員、教職といったところでしょうか。音楽以外にも優秀で、医師、化学者、最近では情報関係とか、自然科学の分野に進出しているケースも非常に多いですね。

Q:聖十字架合唱団の運営にあたっては? 
クライレ:私が就任した14年前は、まだ財政的、政治的な問題が残っていましたが、いまは非常に良い状態にあります。一般に少年合唱団の場合、つねにメンバーの移動があって、新しいメンバーを確保することが懸案事項になりますが、ここでは例年、入団希望者の応募が多いのですよ。勿論、管理者側としては現在の社会生活にマッチした環境を整えることが重用で、寄宿舎の増築、教師陣の充実、教育レベルの向上、といった少年たちの勉強や生活の条件の改良に関してつねに配慮をしています。

Q:芸術面での当面の希望は?
クライレ:聖十字架教会における宗教儀式、それにコンサートが我々の本来の任務であり、ドレスデン市民のために奉仕することが最重要であることはつねに変わりません。一方で付加的になりますが、歴史的にも広く認識されている我々合唱団の存在を将来にわたっても伝承、拡大する意義を考えなければならないでしょう。少年合唱の世界をリードする存在として、ドイツ国内、さらに外国ツアーを促進したいところです。

Q:観光などでドレスデンを訪れる外部の人間にとっても、聖十字架教会の礼拝で聖十字架合唱団を聞くことが出来るのは大きな魅力になっていますね。
ところでクライレさんは、もう何度、来日されていますか?
クライレ:合唱団のみ、それにオーケストラ付きと4回でしょうか。レパートリーはバッハの「マタイ受難曲」がもっとも多く、「ロ短調ミサ曲」も演奏しています。「メサイア」は今回がはじめてですね。勿論、我われは他にもモーツァルトなど、膨大なレパートリーを抱えていますから、次回はそのような側面も披露できるとよいかもしれません。
とにかく、日本を訪れるのは私にとっては勿論のこと、少年たちもおおよろこびしていますので、張り切って素晴らしい演奏をお聴かせしたいと考えています。

山崎睦(ウィーン在住/音楽ジャーナリスト)

クライレ楽長のインタビューその1はこちら



《公演情報》
11月30日(火) 18時30分開演 東京オペラシティコンサートホール
曲目:ヘンデル「メサイア」全曲
12月3日(金) 18時30分開演 サントリーホール
12月5日(日) 14時開演 横浜みなとみらいホール
曲目:J.S.バッハ「マタイ受難曲」全曲

詳しい公演情報はこちらから

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2010年11月26日

ドレスデン聖十字架合唱団 ―ロビー・コンサート編―

今回台湾で彼らが宿泊したホテルは、毎年子供の合唱団のロビー・コンサートを行っています。
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支配人のたってのお願いに応え、今回最後の滞在日に彼らにとっては異例のロビー・コンサートを行いました。30分だけのミニ演奏会でしたが、ア・カペラで際立つ彼らの声の美しさと音程の確かさは聴く人を魅了しました。
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彼らのミニ・コンサートの後には、地元の女の子だけの合唱団が彼らへのお礼の歌を2曲披露。ボディ・アクション入りの元気な合唱にはメンバーもびっくりしていました。
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対照的だったのは、お互いを聴く時の姿です。髪の毛のリボンを直したり動き回ったりする女の子達に対し、ドレスデン聖十字架合唱団メンバーは舞台から降り客席に座る時も、合唱を聴く時も実に見事に統制がとれていて、それは美しいほどでした。彼らが普通の男の子達に戻ったのは、歌い終わった少女達が退場するメンバーに嬌声をあげ始めた時で、どう対応して良いか分からず戸惑う姿は普通の男の子の集団以外の何者でもありませんでした。

〜おまけ〜
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一生懸命おはしでご飯を食べる子供達もいます。


そして、本日合唱団&ドレスデン・フィルが無事に来日しました!
いよいよ公演間近です。お楽しみに!
≪森麻季が加わった癒しのメサイア!≫
11月30日(火) 18時30分開演 東京オペラシティ コンサートホール
ヘンデル:オラトリオ「メサイア」全曲 日本語字幕付


≪人類史上最高の文化遺産、至高のドラマ!≫
12月3日(金) 18時30分開演 サントリーホール
12月5日(日) 14時開演 横浜みなとみらいホール
バッハ:「マタイ受難曲」全曲 日本語字幕付

詳しい公演情報はこちら

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2010年11月25日

東京新聞に掲載されました[ドレスデン聖十字架合唱団]

*2010年11月20日 東京新聞 夕刊
▼画像をクリックすると内容をPDFでご覧いただけます!▼
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ドレスデン聖十字架合唱団 ―リハーサル編―

いよいよナショナル・コンサートホールの舞台で通しリハーサルが始まります。
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子供達も時間には全員きちんと舞台で待機しています。合唱団にとってもオーケストラにとっても初めての国・ホールです。素晴らしいパイプ・オルガンを備えたホールに全員びっくりでした。
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手前にいるソリストはアルトのマルグリート・ファン・ライゼンです。

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森麻季さんと透明なボーイ・ソプラノが圧巻な合唱団はぴったり!
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ドレスデン聖十字架合唱団 ―台湾公演、記者会見編―

一行が台湾に到着した翌日、11月23日には演奏会会場ナショナル・コンサートホールでのフル・リハーサルに先立ち、台北のマスコミ向け記者会見が行われました。
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旧東独時代には、中国との関係を重視した国の政策のため、東独のアーティストの台湾公演は不可能でした(同じ様に、北朝鮮との関係重視のため韓国公演も行えなかった時代です)。

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ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、ドレスデン聖十字架合唱団、4名のソリストの内、森麻季さんを含む3名にとって初めての台湾。海外のアーティストによるメサイアは台湾初めて、という事でマスコミの注目も高く、記者会見にはTV局のカメラが何台も入りました。
記者会見での質疑応答の内容は、ドイツ語=中国語の通訳によって記者達に伝えられました。森麻季さんは英語で質問に応え、日本でも愛されている名作、ヘンデルのメサイアをこの素晴らしい団体・指揮者・ソリスト達と台湾でも公演出来る事を大変栄誉に思っていると語っていました。

マスコミ向けの撮影時間が設けられました。
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写真:(右から3番目の女性は台北公演のスポンサーで財団代表者。)
ソリストは左から クラウス・メルテンス(バス)/マルグリート・ファン・ライゼン(アルト)/ロデリッヒ・クライレ(音楽監督・指揮)/森麻季(ソプラノ)/アンドレアス・ヴェラー(テノール)
posted by JapanArts at 10:44 | ドレスデン聖十字架合唱団>2010年 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ドレスデン聖十字架合唱団 ―台湾公演、到着日編―

日本公演を目前に控え、台湾入りをした合唱団。
今回台湾では「メサイア」を歌います。
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ドレスデンからフランクフルト、香港経由という長旅で台湾に到着した子供達69人。
小さい子供でも一人一人が自分のスーツケースの面倒をみていました。大きな青年達は自分達のスーツケースのほか、全員の楽譜や衣装が入ったスーツケース17個も責任持って運搬と管理をしています。
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ターンテーブルで真剣に自分の荷物が出てくるのを待つ子供達。
子供達でターンテーブルの周りは一杯です。

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小さな子供達にとっては、小型のカートでも身体中で押さなければなりません。
小さくても仲の良い2人が話し合っている姿はまるで大人の様。

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長旅で到着した翌日には既に舞台でのフル・リハーサル開始です。
合唱団は外のレストランで昼食を食べてからリハーサルへ向かうためオーケストラより早く出発。
ロビーに集合するメンバー達。引率の先生方の指導が行き届いていて、時間には全員きっちり揃います。

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遊びたい盛りの子供達なのに、本当に大人しくきちんと団体行動を取るので、69人もいるとは思えません。

posted by JapanArts at 10:28 | ドレスデン聖十字架合唱団>2010年 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月18日

「ドレスデン聖十字架合唱団」クライレ楽長インタビュー(その1)

聖十字架合唱団の第28代クロイツカントール(楽長)を務めるロデリヒ・クライレ氏はミュンヘン生まれ(1956年)で、就任以来すでに14年目になる。
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Q:ドレスデンに来られる前はミュンヘン・フィルハーモニー合唱団の指揮者として活躍されていたわけで、チェリビダッケやマゼールが指揮するミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団と共演する楽曲の合唱パートで、レクイエムやオラトリオなど宗教的な作品もありますが、ベートーヴェン「第9交響曲」やオルフ「カルミナ・ブラーナ」のような大規模な世俗音楽作品をレパートリーにしていらした。ところがドレスデンでは教会付属の少年合唱団で、バロックを中心とする宗教音楽の世界に入られたところが注目されますね。
クライレ:94年からの3〜4年間、私はミュンヘンで宗教音楽以外の幅広いレパートリーを取り上げることができて、素晴らしい経験であったと考えています。ただ、97年にドレスデンからオファーを頂いたとき、私は40才でしたが、これは自分の人生にとって大きな契機だと直感しました。世界屈指の団体から指名を受けたことになりますから、非常に名誉なことであったわけです。
合唱音楽を専門にするということは、もともと宗教音楽を基本とするわけで、私自身も子供のときから教会で歌い、オルガン奏者としても活動するなど、この分野で長年研鑽を重ねてきました。

Q:いまや伝説的なカール・リヒターがミュンヘンで大活躍していた時代のことはご存じですよね。
クライレ:私はまだ子供でしたが、とくにミュンヘンでは非常に重要な存在であり、大きな影響を受けました。戦後のあの時代にバッハ受容を促進し、現在に継続させた彼の功績は計り知れません。
そのように私は宗教音楽から離れたことはないし、フィルハモニー合唱団の指導をしているときも同時にミュンヘン音楽大学で教授として室内合唱団も指導したりしていましたから、ドレスデンに移籍することに関しては、まった違和感はありませんでした。たしかに現在、レパートリーとしてヴェルディの「レクイエム」のような大曲を扱うことはもうなくなりましたが。

Q:ここ40年ぐらいの間に古楽器団体の台頭もあって、バロックを中心とする古楽演奏の実践傾向が世界的に大きく変化してきました。コンサートホールでの純粋な音楽としての演奏と、教会における礼拝の枠内での演奏では、解釈が異なるものでしょうか。
クライレ:基本的には違いは無いと考えています。ただ実際問題として、共演するオーケストラが古楽器団体かモダンな団体かによる違いは大きいですね。また教会特有の残響も考慮に入れないとならないケースが多々あり、速いテンポで音が濁ってしまうような場合は手加減が必要になります。
厳格な古楽実践に徹しようとするとアンサンブルをごく小編成に絞り、カウンタテナーを使うことになりますが、一方でそのような傾向を参考にしながら、聖十字架合唱団の条件に合った対処の方法をつねに考えています。わたしたちが共演するのはドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団で、彼らは近代楽器を使用するモダン・オーケストラですが、当地には古楽器集団であるドレスデン・バロック管弦楽団もあり、適宜彼らとも共演して経験を重ね、柔軟性をはかっていきたいと考えているところです。

Q:精神の安らぎ求めて教会に来る人たちのためには、たとえば「マタイ受難曲」で、強い感情の起伏をダイレクトに表現するのは、やはり避けられるべきなのでしょうか。
クライレ:それは作品自身の性格に基づくと考えるべきで、イエス受難の激しい悲しみ、慟哭(どうこく)は、教会であってもじゅうぶん表現すべきであり、人びとがそれに心動かされるのは当然であるというのが私の解釈です。

山崎睦(ウィーン在住/音楽ジャーナリスト)

2010年10月31日にドレスデンで行われた「メサイア」のレポートはこちらから


《公演情報》
11月30日(火) 18時30分開演 東京オペラシティコンサートホール
曲目:ヘンデル「メサイア」全曲
12月3日(金) 18時30分開演 サントリーホール
12月5日(日) 14時開演 横浜みなとみらいホール
曲目:J.S.バッハ「マタイ受難曲」全曲

詳しい公演情報はこちらから
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2010年11月09日

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《公演情報》
12月3日(金) 18時30分開演 サントリーホール
12月5日(日) 14時開演 横浜みなとみらいホール
曲目:J.S.バッハ「マタイ受難曲」全曲

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2010年11月05日

「メサイア」レポート[ドレスデン聖十字架合唱団&ドレスデン・フィル]

 ドレスデンを中心とするドイツ・ザクセン州一帯では1517年に起きたマルティン・ルターによる「宗教改革」の発端を記念する祝日が10月31日に制定されており、この日に合わせて宗教音楽が大きな盛り上がりを見せている。第二次大戦で破壊されたままになっていたフラウエンキルヘ(聖母教会)が再建され、献堂式が挙げられたのが2005年のこの日であり、今年はその5周年に当たることから、例年にも増して豪華な週末だ。われわれの聖十字架合唱団を擁するクロイツキルヘ(聖十字架教会)もその祝典行事の一環を担い、祝日の礼拝はもとより、その前夜に公開コンサートの枠組みで演奏されたのがヘンデル『メサイア』であった。
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 礼拝堂建築に特有の残響が少ない聖十字架教会では、むしろ音の分離、抜けが良く、合唱音楽を聴くためには素晴らしい環境だ。そこで厳格な統制の元に生まれる完璧なハーモニーは、まさに息を呑むようで圧巻としか言いようがない。合唱団メンバーの耳が研ぎ澄まされ、相互に聞きあう能力が最高度に発揮されているのだ。さらに音楽が進むにつれて、このようなハーモニーには卓越したテノール、バスが大きく作用していることに気付くだろう。響、音色を統一した少年達によるソプラノ、アルトの比類のない純度の高さは勿論として、他方で絶妙にバランスを保持しながら高声を支え、しっかりと堅固な基盤を守っている低声群の存在が世界最古の少年合唱団である聖十字架合唱団の秘密と言えるのではないだろうか。
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 ここで同合唱団のシステムが生かされているのだ。一般に少年合唱団では変声期に達した時点で当事者は退団を余儀なくされるが、ここではギムナジウム(中学・高校)を終了する18歳まで合唱団にとどまり、音楽活動を継続することができるのだ。かって合唱児童として高声部を受け持っていた少年が変声期を経て、いま低声部を担当しているわけで、小学4年生から9年間にわたって合唱を学び、実践してきた音楽性ゆたかな青年たちがここで真価を現すことになる。他の合唱団は低声部のために大人の合唱団を組み合わせているが、聖十字架合唱団ではともに9年間を過ごした仲間としてのアンサンブルであり、ここに歴然たる違いが出てくることは至極当然のことであろう。
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 近年のバロック演奏の傾向とされるような聞き手を直に刺激し、感情を煽(あお)るような解釈を、教会という場所をわきまえて回避しようとするのがロデリヒ・クライレ楽長(カントール)の懐の深さだと思われる。『メサイア』は、第二部の最後に来る、あまりにも有名な「ハレルヤ」のせいで威勢の良い元気な作品と思われる向きがあり、とくにアマチュアや学生合唱団は大人数で喉も裂けよとばかりに絶叫する傾向にあるが、テキストを一読すれば、人間の罪を一身に背負ったイエスの深い悲しみをたたえた作品であることは一目瞭然であろうし、現在はそのような解釈が主流になっている。
ちょうど寒さが厳しくなった折りでもあって、4人の独唱者のうち2人が交代する事態となった。この晩出演したスザンネ・ベルンハルト(ソプラノ)、マルグリート・ファン・ライゼン(アルト)、アンドレアス・ヴェラー(テノール)、ヘンリク・ベーム(バス)は、いずれも宗教音楽を得意とするプロフェッショナルであって、ドレスデン室内フィルハーモニー管弦楽団とともに求心力をもって整然と演奏され、会堂を埋めた人々の心に深く訴える『メサイア』であった。
 日本で演奏される『メサイア』が同じように感動的であることを確信する。

山崎睦(ウィーン在住/音楽ジャーナリスト)



《公演情報》
11月30日(火) 18時30分開演 東京オペラシティコンサートホール
曲目:ヘンデル「メサイア」全曲
12月3日(金) 18時30分開演 サントリーホール
12月5日(日) 14時開演 横浜みなとみらいホール
曲目:J.S.バッハ「マタイ受難曲」全曲

詳しい公演情報はこちらから


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