合唱団メンバーのマクシミリアン・トム君は1998年生まれ(12才)で、アルトのパートを歌っています。
Q:聖十字架合唱団に入ったのは?
マクシミリアン(以下M):生まれたのは、ここから130キロメートル離れたゲラですが、兄が聖十字架合唱団のメンバーで、現在も在籍していますけど、その関係でボクもごく自然に合唱団に入ったかんじです。小学校4年生になったときに入団したから、もう3年になります。これからアビトゥア(大学入学資格)を取得するまで、あと6年間、合唱団に居るでしょう。
Q:将来の職業の希望は?
M:大学の医学部に進んで医師になることを考えています。
Q:音楽家になろうとはしないの?
M:地域の合唱団に入って歌うことは続けるけど、音楽を職業にする気持ちはありません。
Q:将来の方向がもう決まっているんだね。寄宿舎での一日の行動は?
M:フツーの学校の授業の他に毎日2時間、合唱の授業があって、それが充実していて楽しいです。他に2時間の自由時間は、たいていサッカーをしています。
Q:これまでに日本に行ったことは?
M:2年前に6都市を訪れて、みなさんに満足してもらったと思っていますが、今回もっと成果が上げられるといいな、と考えています。あと、家族の全員にピッタリするおみやげを見つけることですね。
バリトンのパートを歌っているニクラス・シーツォルト君は1993年生まれ(17才)で、年長組としての自覚と責任感を持った頼もしいメンバーです。
Q:聖十字架合唱団での経歴は?
ニクラス(以下N):入団したのは8年前の2002年で、今年が最後の9年目になります。小学4年生で入団して9年間在籍するという、合唱団の規定通りに進んで来たことになります。生まれはケニッヒシュタインという、ここから30キロ離れた町で、小学校の音楽の先生がボクに聖十字架合唱団に入ることを勧めてくれました。それで3年生の時から声楽とピアノのレッスンを受けて、4年生の入団試験の準備をしたのです。
Q:入団した後の寄宿舎生活は、いまの君たちの世代にとって、やはり特殊だよね。
N:確かにそうですね、女子生徒はいないわけだし(笑)。しかし絶対に長所はあって、男子同士の生活を通してお互いに切磋琢磨しています。集団生活だから、喧嘩とかトラブルは起きますよ。だけどそれを解決する協調性が身に付くようになると思います。
Q:楽器は?
N:ピアノを10年間やっています。ここでは合唱の他に楽器の習得が必須科目になっていて、ヴァイオリン、ギター、クラリネットとか、たいがいの楽器を選べるようになっています。寄宿舎のなかに練習用の個室があり、、また半分ぐらいの寝室にもピアノが入っていて週一回のレッスンの準備をしています。それで年に2回は発表会で全員が演奏することになっています。
Q:現在の声域はバリトンだけど、変声前は?
N:子供のときはアルトでした。06年から08年までの2年間が変声期で、その期間は合唱を中断し、音楽活動はしなかったけれど、ボクは寄宿舎にはそのまま置いてもらって、フツーの勉強は続けていました。精神的には確かに苦しい時期で、これまで音楽の訓練に割いていた時間が自由になることもあって、合唱団から出てしまう仲間もいました。変声期が終わった後も合唱を続けるのは、それだけ音楽に対する強い意志を持った人間ということになりますね。
Q:これからの将来は?
N:アビトゥア取得の後、ドイツでは義務になっている兵役に6ヶ月間就きます。実際に軍隊に入るのではなく、病院とかの民間奉仕です。それから大学ですが、まだコミュニケーション関係にするか精神科系の医学部に進むか決心がついていません。
Q:こんなに長く合唱団にいるんだから、すでに日本には行っているよね?
N:ところがまだ一度も行ったことがないんですよ。連れて行ってもらえなかったわけではなくて(笑)、ちょうど変声期だったりしてチャンスを逃しました。だから今度のツアーは非常に楽しみにしています。我々ヨーロッパの合唱文化を日本の皆さんに披露できるのは素晴らしいことだと思うのですよ。
山崎睦(ウィーン在住/音楽ジャーナリスト)
《公演情報》
11月30日(火) 18時30分開演 東京オペラシティコンサートホール
曲目:ヘンデル「メサイア」全曲
12月3日(金) 18時30分開演 サントリーホール
12月5日(日) 14時開演 横浜みなとみらいホール
曲目:J.S.バッハ「マタイ受難曲」全曲
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